ｽﾄﾚｲ･ｷｬｯﾄ☆ｼｭ-ﾃｨﾝｸﾞ･ｽﾀ-

　珠希の顔を掻き消しながら、久留美にメールする。

『久留美ちゃん、元気！　今話せますか？』

　客先から、直接自宅の方に帰ることになり、夕焼けで朱色に染まった街中を社用車で飛ばす。街は朝とは正反対の表情を作り出してはいるが、朝の人間と夜の人間が違うだけで、窓の外には人の群れ。会社員やＯＬは仕事を終えて、これからが自分の時間。表情も生き生きとしている。

　ある者はパンプスのかかとを磨り潰して、愛する人との待ち合わせに急ぎ足。ある者は革靴の裏側に会社での憂さを詰め込んで、同じ虚遇の仲間と角の飲み屋で一杯ひっかける。またある者は、家族の温かさと美味しそうな夕飯の香りのする我が家へ急ぎ、ある者は、自分のプライドと売り上げを上げるために、女の武器をちらつかせて獲物となる男たちと待ち合わせる。そして、ある者は誰も居ない冷たい部屋に帰り着く。

　マンションの客用ガレージに車を停めて、携帯電話を開きながら部屋へ急ぐ。昼すぎに久留美にメールを送ったけれども、未だ返事は着ていない。彼氏と会ったときにサイト遊びがばれてしまい、久留美から連絡出来なくなったのかと勝手に想像し、嫌な予感があたまをよぎる。仕方なく、ぼくは夕飯をつめ込み、ふと、以前、三上のところで購入したＣＤを聴こうと思いステレオにセットする。

　一曲目が終わり、二曲目が始まる。きらびやかなボーカルの歌声と、ギターのリズムが部屋を満たしていく。そして、三曲目の始まりを告げるドラムの音が鳴り響いたとき、ぼくの携帯にメールが着信した。

　久留美からのメールが届いた。ぼくは、そのメール内容を見て心臓を直に掴れた。