ストレイ・キャット☆シュ-ティング・スタ-
 迷子の子猫はひとりぼっち。


 ステレオから流れていたメロディが、胸に沁みてくる……。

 ☆ストレイ・キャット☆

その曲が、久留美のことを唄っているかのように音符を奏でる。
 ぼくのあたまに浮かんでくる久留美の顔写真。久留美の気持ちを知らずに、自分がしようとしたこと、こんな馬鹿なことをしている自分をぼくは深く恥じた。

「久留美ちゃん……」

 ことばが上手く出てこない。

 部屋の中を満たしていくメロディ……。

 音符がこころを叩く。

 ぼくは、携帯のアルバムを開いて久留美の顔を見る。その笑顔の裏側にはそんな辛い現在があったなんて思いもよらなかった。そのメロディと久留美の気持ちをダブらせて、直ぐにメールを返す。

『今、久留美ちゃんのメールを見て、どうしても返信したくなりました。上手くことばに出来ないけれども……、ごめんね。久留美ちゃんがそんな大変な状態とは知らずに、こんなメールをたくさん送りつけて。大丈夫ですか? なんか、気持ちがもうそっちにいってるからスゲェ心配になりました。顔写真見たりしたら、そんな感じ全然なかったから。何か出来ないですか? ぼくに。せっかくメールで出逢えたんだから! 何かしてあげたいです。』
 
 なんてバカなことをしていたんだと思った。出逢ったこともない女性に、ひどいことをしたんだと、あたまを悩ませて自分を恥じた。薄暗いリビングルームにぼくの後悔が広がっていく。


 ぼくのこころの中にその子猫が入り込む。


「彼女はきっと、壊れそうな自分を支えてくれるような、本当の友だちが欲しかったんだ……」
 
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