ストレイ・キャット☆シュ-ティング・スタ-
『久留美ちゃん元気! 段々と暖かくなってきたよね。大通りに並ぶさくらの花がとてもきれいだよ! 何しているのかな? ぼくは今、休憩中です。身体の調子はいいですか?』
ぼくはさくらの木の下、舞い散る花びらに埋もれながら、自分でもお節介だと思う文章をメールにして久留美に送る。
久留美はストレイ・キャット。ぼくのあたまにあのメロディが流れ出す。
ゲームのつもりだった、最初は。今は、今はそうではなくひとりの人間として、同じ痛みを知っている久留美に何かしてあげたいと思う。そして、自分の身体にも障害があることを久留美に告白しようと思った。
ピンク色に化粧したさくらの花びらがぼくを包んでゆく。逢ったこともない女に共感していく気持ちを自分では止めることが出来ずにいた。
その日の夜、自分の身体のことを正直にメールにして久留美に送信。余計なお世話だと、自分でもそう思った。
『こんばんは! 久留美ちゃん。調子はどうですか? え~ちょっと聞いてね。ぼくは、今から十年ほど前に「水頭症キアリ奇形」という病気で、大学病院に六十日間入院していました。生まれ持っての左小脳の奇形で左半身が動きにくくなる病気です。約二十年の間にその病はぼくの身体の中で大きくなり、次第に左半身が自分の思うように動かなくなりました。何かをしようとすると左手が震えんのよ……。人前で何も出来なくなって辛かったなぁ。それで思い切ってオペしたんよ、約九時間の。オペからも直ぐにはよくならずに、今で十年くらい。オペまでの十年とそれからの十年。ずっと悩んでたよ。最近になってようやく気持ちが落ち着きました。久留美ちゃんに最初逢ったとき、本心では口説く気持ち有りでさ、写メ見たらすごくかわいかったし、ひとりで盛り上がっていたんだけど……。今は、ひとりの人間としてあなたを心配しています。人生いろいろあるよね。でもきっと、終わりが来るときがあると思うからさ。ほんと、余計なこといってごめんね。でも、今夜は返信下さい。待ってます。』
お節介だと思いながらも、こんな内容のメールを送りつけた。無理に返信を希望したけれども返っては来ないだろうと勝手に決め付けて、ぼくはベッドに滑り込み、眠りについた。
視界から星が消え去ったことは、書いていなかった。
ぼくはさくらの木の下、舞い散る花びらに埋もれながら、自分でもお節介だと思う文章をメールにして久留美に送る。
久留美はストレイ・キャット。ぼくのあたまにあのメロディが流れ出す。
ゲームのつもりだった、最初は。今は、今はそうではなくひとりの人間として、同じ痛みを知っている久留美に何かしてあげたいと思う。そして、自分の身体にも障害があることを久留美に告白しようと思った。
ピンク色に化粧したさくらの花びらがぼくを包んでゆく。逢ったこともない女に共感していく気持ちを自分では止めることが出来ずにいた。
その日の夜、自分の身体のことを正直にメールにして久留美に送信。余計なお世話だと、自分でもそう思った。
『こんばんは! 久留美ちゃん。調子はどうですか? え~ちょっと聞いてね。ぼくは、今から十年ほど前に「水頭症キアリ奇形」という病気で、大学病院に六十日間入院していました。生まれ持っての左小脳の奇形で左半身が動きにくくなる病気です。約二十年の間にその病はぼくの身体の中で大きくなり、次第に左半身が自分の思うように動かなくなりました。何かをしようとすると左手が震えんのよ……。人前で何も出来なくなって辛かったなぁ。それで思い切ってオペしたんよ、約九時間の。オペからも直ぐにはよくならずに、今で十年くらい。オペまでの十年とそれからの十年。ずっと悩んでたよ。最近になってようやく気持ちが落ち着きました。久留美ちゃんに最初逢ったとき、本心では口説く気持ち有りでさ、写メ見たらすごくかわいかったし、ひとりで盛り上がっていたんだけど……。今は、ひとりの人間としてあなたを心配しています。人生いろいろあるよね。でもきっと、終わりが来るときがあると思うからさ。ほんと、余計なこといってごめんね。でも、今夜は返信下さい。待ってます。』
お節介だと思いながらも、こんな内容のメールを送りつけた。無理に返信を希望したけれども返っては来ないだろうと勝手に決め付けて、ぼくはベッドに滑り込み、眠りについた。
視界から星が消え去ったことは、書いていなかった。