ストレイ・キャット☆シュ-ティング・スタ-
「オペになるんですか?」

 初めて聞いたヘンテコリンな検査名にぼくは動揺する。

「そうですね。メスを入れる必要はないですが、局部麻酔になります。そしてオペ後は一晩安静になりますね」

 日常会話のように淡々と話す看護士。足の付け根からカテ−テルを注入するために剃毛が必要らしく、どう処理するかを聞いてきた。

「どうしますか? ご自分でなさりますか? それとも処理させて頂きましょうか?」

「……自分で処理します」

 三十歳にも満たないだろう若いおんなの看護士に、下半身の剃毛をされるのは病人といえども照れがある。恥ずかしい。ぼくは自分で処理することにした。

「いくら看護士だからとはいえ、ちょいと恥ずかしいわ。反応とかしたら笑われちゃうしな」


 病院内のちいさなバスル−ム。看護士から渡された三つで百円くらいの安っぽいカミソリで、自分の陰毛を処理する。ぼくは髭以外のムダ毛を生まれて初めて処理した。

「こんくらいで、いいかな?」

 片方だけ残った陰毛。鏡で見るとなんか可笑しい。きっと珠希が見たら大笑いするだろう。処理が終わったことを看護士に告げると、わざわざトランクスに手を入れられチェックされた。

「柏原さんOKです。では明日午前、アンギオ検査になります」


 ぼくは左半身以外、とても健康で元気だったからか、先生や看護してくれる人たちから余り心配されていないようで、それがなんだか可笑しかった。左半身といっても握力は人並みで、指先も自由に動く……。指で数字のいち、にい、さんとどんなに速くても動かせるのだ。病院内にはもっと重い病気の人たちがたくさん居る。その患者たちを優先されるのは仕方のないことだろう。
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