ストレイ・キャット☆シュ-ティング・スタ-
 久留美のこころの傷を、どれだけぼくが理解できたのかは知れないけれども、この先も久留美が背負っている傷を、この手で癒してあげればと思った。

 ふたたび、ふたりで宇宙の彼方へ、一瞬の旅が出来ればと思っていた。
 
 数時間前、初めて逢った久留美と見た景色、ぼくは永遠に忘れることはないだろう。記憶の奥底に焼き付いた景色たち。

「珈琲飲む?」

 ぼくはお湯を沸かして、珈琲を作る。香りが漂いふたりを包んでいく。

「堕とされた(苦笑)」

 子猫のようにうつむいて笑う久留美。

 ふたりは精尽きた身体を寄せ合って、熱い珈琲をすすった。

 やがて、リビングのフローリングにふたりのシルエットが写し出されて、許された時間は過ぎ、別れのときがやって来る。

「じゃぁ、そろそろいくわ」

 久留美はそういってソファーから立ち上がる。

「うん、それじゃ」

 ぼくも立ち上がり、見送る用意を始める。久留美の残り香が身体に染み付いていることに気が付いて、少しの寂しさが込み上げる。N3‐Bを羽織って玄関にいくと、久留美のロングブーツが眠るように横たわっていた。

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