変わりゆく華たち 第一幕 散ル華
第零章
夜の町
【夜四つ半(現在 22時30分頃)】
「ギャアァァァア!!」
刀を振るうと薄暗い路地に男の叫び声が響きわたった。
刀には悲鳴をあげながら逝った
男の朱い血がついている。
「あ、ああ…
たっ、頼むっ!!助け、くれっ!!」
目の前にいる男は声を掠らせてそう言う。
さっきの奴もそうだが煩いな。
大声を出したら奴らが来るだろ?
奴らが来たら色々面倒だ。
「フッ、フフッ…助けてくれ?助けるわけないだろう」
都合のいい人間だな。
世の中そう簡単に動いてないのはお前は知っているはずだ。
あの時みたいに自由にさせる筈が無い。
俺が前に一歩踏み出すと男は後ろへ下がった。
「お前に聞きたいことがある。正直に答えろ。いらない嘘をつくなんて馬鹿な事はするなよ」
また一歩前に出た。
男も同じように後ろへ下がる。
「十年前の“アノ”ことを覚えているだろ」
「アノ、こと…?」
「そうだ」
「…お、覚えているさ。それがどうした。
あ、あんたには関係のないことだろ。」
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