変わりゆく華たち 第一幕 散ル華
第壱章
甘味所
【文久三年 皐月】
目の前にある大きな桜の木。
その桜の木は見事に満開の花を咲かせている。
その桜は今日の青空のおかげなのか、いつもよりより一層綺麗に見える。
日差しも暖かくとても過ごしやすい日だ。
「あっ、いらっしゃい。また来てくれたのね。いつものでいい?」
空をぼんやりと眺めていると此処、[甘味所 花]の女将さんがやって来た。
「はい、お願いします」
そう伝えると女将さんは店内の奥へ入っていった。
この店は女将さんと、その女将さんの旦那さんとで営んでいる。
二人は夫婦で、この辺りでは何かと有名だ。
それは“仲良し夫婦”として。
初めてこの店に訪れた時は、
どこの若い恋仲だ、
と思った。
周りを気にせず二人はずっと、くっついているらしい。
『幸せそうでいいじゃないの〜』
『いや〜、さすがにあそこまで見せつけられるとね…』
と、周りからはいろいろな意見が飛んでいる。
---いい迷惑だな。
「はい、おまちどうさま。
餡蜜よ」
「あ、ありがとうございます」
お盆の上に置かれた餡蜜と緑茶。