上弦の月
校門に着くと皆の視線が痛かった。
「おかえり、柚月」
「ただいま…」
新庄さんは車に乗るようとドアを開けてくれた。
さりげない気遣い。
女性の扱いは慣れているようだった。
なんか嫌だな、やっぱり彼は大人だ。
「新庄さんどうされたんですか?」
「俺らの新居にと思ってね」
「新居?」
いつの間にそんな展開になっていたのだろうか。
きっと父の差し金だろう。
マンションの前に着くとま新庄さんはドアを開けてくれた。
「新庄さん、婚約はいつするかとか聞いてますか?」
「多分1ヶ月以内にはすると思うけど。
それと、結婚するんだし下の名前で呼んで?」
「遥歩(あゆむ)さん…?」
「そ。いいこいいこ」
遥歩さんはそういってわたしの頭を撫でた。
両親にもやってもらったことがない事に少し戸惑った。