上弦の月
遥歩さんが来ると警察官のおじさんは「お兄さんですか?」と聞いた。
すると
「いいえ、夫です。妻がお世話になりました」
と自然に挨拶をした。
妻と言われたことに少し照れ臭くて、でも心の中ではすごく嬉しかった。
外に出るといつの間にかあたりは真っ暗になっていてた。
「今日は遅いし、いろいろあったし外で食べようか」
「はい…」
遥歩さんの車に乗り着いた場所はパスタ屋さん。
「遥歩さん、今日は迷惑かけてすみませんでした」
「いいよ、それより大丈夫?」
「はい、なにもされなかったですしちょうどおまわりさんが来てくれたので」
「精神的には?男の人怖くなったとかない?」
「はい、大丈夫です。結構こういうの強いので」
強いって言ったって怖くないって言ったら嘘。
後ろからの物音が怖い、自分に向けられる視線が怖い。
私ってこんなに臆病だったっけ。