上弦の月
「柚月ちゃん!パパがね、また連れて来なさいっていってたよ!今日うち来ない?」
「本当?!レナちゃん家行きたい!」
レナちゃんのお家には何回も行ったことあったし、レナちゃんのパパにもママにも会ったことがあった。
レナちゃんちに着くといつもと何かが違かった。
いつもある華やかな薔薇の庭でさえ活気がないように感じられる。
でも幼かった私にはそんなこと深くは考えなかった。
「いらっしゃい、柚月ちゃん。さ、おじさんと一緒にお部屋に行こうか。
レナはお菓子を持って来てあげなさい」
「はぁーい」
レナちゃんのパパはレナちゃんのお部屋には行かなかった。
何回も来たことあった私はそれに気づいた。
「ねぇレナちゃんのパパ、レナちゃんのお部屋変わったの?前はこっちじゃないよね?」
「そうだね、レナの部屋には行かないから」
「え?いかないの?じゃあどこ行くの?」
「それはね……」
小さな扉の前で止まったレナちゃんのパパは扉を開けて私の腕を掴んで私を中に連れ込んだ。
中は真っ暗で何が起こってるのかわからなくて某然としてると突然扉が閉まりなにも見えなくなった。
「どうなってるの?」
さっき確認した感じでは小さな部屋だと思う。
しかも鍵を付けた音がした。
嫌な予感しかしなかった。
「ねぇ、真っ暗で見えないよ?」
「その方がお前の憎たらしい顔も見えなくて済む。お前は父親そっくりだな、余計腹立たしいわ!!」
その瞬間左ほっぺに激痛が走る。
あぁ、殴られたのか。