Crescent
「透がどう話したか知りませんが橘様にお話しするような事はないですよ」
「店長は私にお話しするような事はない、んだ。
そう……だったらいいわ。
私も聞く事はないわ」
なんだ……?
その意味の分からない言い方。
「まぁいいわ。
店長が話したくなったら、いつでも聞くわよ」
「橘様、もしかして小説のネタでも探してるんでしたら生憎そんなネタは持ち合わせてませんよ」
彼女は何かを言いたそうにじっと見た。
何が言いたいんだ?
ちょっと緊張気味に次の言葉を待っていたが。
「……店長、コーヒーのお代わり」
「はぁ……」
何だコーヒーのお代わりか。
コーヒーのお代わりを持って来ると飲みほしてから、いつものように「今日も美味しかったわ」と言って出て行った。