Crescent
目当てのパンはなかったし、美味しそうなパンをトレーに数個乗せカウンターへ向かった。
「986円になります。ありがとうございました」
結局店長さんは見れなかったし……もうっ、何しに行ったんだか。
あの店員さんに訊けば良かったかなぁ……。
気が抜けて帰りはドッと疲れを感じた。
会いたいのに会えなかった。
そんな時ってきっと余計に会いたくなるものなのかもしれない。
「ただいま」
「おかえりー」
家に帰るとお姉ちゃんが座りながら返事をしてくれた。
「またアンジュのパンだ。
今日も貰ったの?」
「ううん、自分で買って来たんだよ」
「ふぅん……」
パンを持った私に質問したあと、お姉ちゃんは何故だかニヤッと笑った。
「何笑ってるの?」
「あんたさぁ、もしかして店長を見に行ったの?」
「はっ?
な、なに言ってるの?
お姉ちゃん変な事を言わないでよっ」