Crescent
「直ぐ行くわ。
外で待ってて。
琴音ちゃんで良かったかしら?
今日は楽しかったわ」
「私も凄く楽しかったです」
「また、ここで、こうやって話せたらいいわね。
じゃあ行くわ」
橘さんは待たせてあった車に乗って帰って行った。
「帰ろうか」
「いつも遠回りさせてしまってごめんなさい」
「この間も言ったけど俺が勝手にやってるんだから気にしないでいいからさ」
「はい」
例え友達としてでもこうやって一緒に歩いたり話したり澤野さんの近くに居れば幸せだなって感じられる。
こういう関係も、ありなんじゃないかって思うんだ。
「なんか……」
「えっ?」
「いい顔してる。
そんなに楽しかった?」
「作家さんて聞いてたからちょっと緊張してて、あんな気さくに話せると思ってなかったから。
楽しかったです」
「なんか、悔しいな」