Crescent



「琴音……」


「もう、やだっ。
今さら何なの。
私は隼人なんてもう好きじゃないのっ。これ以上、隼人の都合で振り回さないで」



もう一度掴まれていた手を振り払うとさっきは離れてくれなかった隼人の手が今度は直ぐに離れた。


走ってその場を離れた。



しばらく走って苦しくなって足を止めて後ろを振り返り誰もいない事にほっとしてアンジュに向かった。



「琴音さん!
買いに来てくれたんだ」


いつもの真下さんの場所には笹嶋さんが立っていた。



「こんにちは、真下さんはお休みですか?」


「用事があるとかで1日お休みを取ってるんだ。
店長ー、琴音さん来てますよ」



「琴音ちゃん来てくれたんだ」
笹嶋さんに呼ばれて澤野さんが奥から出て来た。



「アンジュのパンが食べたくなって買いに来ました」



パンが並んでいる棚の前に立った。
どれに、しようかなぁ。
どれも美味しそうで迷うな……。



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