Crescent


「これっ、オススメだよ。
食べてみて」


「えっ!?」


持っていたトレーの上にトングを使って載せられたパンと隣に立っている澤野さんを交互に見比べるように見た。


「あの……澤野さん?」


「次、これもオススメ!
これもねっ」


私が呆気にとられている間に澤野さんは次々とトレーの上にパンを載せていった。



こんなに買うつもりじゃなかったんだけど……。


代金を払おうとトレーをレジに持って行こうとしたら。


「待って!
紅茶淹れるから食べてったら?
この中で食べたいのはどれ?」


「えーと……じゃあ、これとこれを」



選んだもの以外を袋に入れてもらい。
笹嶋さんにお金を払おうとしたら、さっき選んだ二個分の代金だけで良いと言われた。


「かかった分はちゃんと払います。
幾らですか?」


「店長からその分だけって言われているからいいですよ」


「でも……」



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