Crescent
参ったなぁ……。
まさか、こんなに泣かれるとは……。
彼女の直ぐ近くに移動した。
揺れている肩が儚げで。
ずっと傍にいて護ってやれたら……。
顔を上げた瞳は潤んでいて頬には僅かに赤みが差している。
誘われるように身体が動き気が付いた時には彼女の柔らかい唇に自分の唇を押し付けていた。
唇を割って舌を入れようとした時、幽かにパンが焼き上がった事を知らせる音が聞こえたような気がして。
彼女から離れた。
頭がはっきりしてくると同時にバカな事をしたと後悔した。
「ごめん。
今のは忘れて」
勝手な事を言っているのはちゃんと分かっている。
この事で彼女を混乱させてしまっている事も……。
やっぱり、これ以上は無理だ……。