Crescent


「ねっ?
帰るなんて言わないで一緒にランチを食べて行こう?

それと良い機会だから店長とちゃんと話しなさい」





昨日は会いたくて仕方がなかったくせに今はこのまま会わずに帰りたい。


この場から逃げたい。



車から降りてアンジュの入り口から入るみずきさんに続いて中に入った。



入って直ぐに、ある違和感を感じた。



「お待ちしてました橘様。
琴音さんも久しぶりね」



真下さんに声を掛けられて違和感を何故感じたか分かった。


それは真下さんの睨みが今日はなかったから。
今までとは違う。
本当に笑顔の真下さんがカウンターに立っていた。



そんな真下さんの変わりように驚いてしまって直ぐに返事が返せないでいると。


「橘様の連れが琴音さんだなんて思わなかった」


「一緒に映画を見に言った帰りなんです」


柔らかい笑顔の真下さんからは、今までのような敵意は感じられなかった。



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