Crescent
「きっと大丈夫よ」
「みずきさん?」
「昨日言ってたじゃない。
最悪な事態でも諦めなかったら、いい方に変わって行く事もあるんだって。
あの映画の主人公のように本音でぶつかってみたら?」
「お待たせしました」
澤野さん!
直ぐ近くに澤野さんがいるのに下を向いたままの私。
気まずい……。
「琴音ちゃん……久しぶりだね」
今までに聞いた事のない弱々しくかすれた声。
この声本当に澤野さん?
思わず顔を上げたら困ったように私を見ている澤野さんと目が合った。
私が来たら迷惑だった?
胸がキュッと痛くなり澤野さんから目を反らせた。
みずきさんと何かを話したあと私を見ることなく奥に行ってしまった。
「琴音さん全然来てくれないから、どうしたかなって心配してたんですよ」
私の前にパンと紅茶を置いた笹嶋さんが話しかけて来た。
「店長もずっと元気がなくて……。
店長の事は許してやって下さい。
きっと反省してます」