Crescent


―――アンジュ閉店後。


「店長、お先に」


「真下ちゃん、お疲れ」


「お疲れさまでした!」


「透、お前ももういいぞ」


「それじゃあ、僕もこれで」


さっき帰った真下美香と笹嶋透はここ、アンジュの従業員だ。


二人が帰った後、鍵を閉めて店を出た。
帰り道の途中の公園に差し掛かると。
つい中にあるベンチに座って空を見る習慣がついてしまっていた。



何でかなぁ。
どうしても彼女の事が頭から離れなくて。
最初は泣いていたのに三日月を見ていた時は笑顔になって嬉しそうに見ていたっけ。


あの時は全く知らない彼女の事を、ずっと前からの知り合いのように思えて変な感じだった。


あの日会った彼女にまた会えるんじゃないかって期待しながら。


もう何日も公園に、通い続けている。
会えるかどうかなんてわからないのに……


< 21 / 281 >

この作品をシェア

pagetop