Crescent
「あぁ、また今日も空振りか……」
また今日も彼女には会えず、ベンチから立ち上がって帰ろうと振り向くと。
人が立っていた。
心なしかあの時の彼女に雰囲気が似ている気がする。
どうしようか話し掛けて違ってたら……。
でも、もしかするとあの時の彼女かもしれない……。
迷いながら話し掛けた。
「……もしかして三日月の夜にここで会わなかったかなぁ?」
「あ、は、はいっ。
あの時のパン美味しかったです」
やっぱりあの時の彼女だった。
やっと会えた。俺は嬉しくなり内心でやった、って言っておいた。
ベンチに座るように言うとこっちに歩いて来た。
彼女の横にもう一度座る。
「帰る所だったんじゃないですか?」
「いや、もう少し月を見ていこうかなと思ってさ」
この間と同じように彼女は空を見上げた。