Crescent



「あぁ、また今日も空振りか……」



また今日も彼女には会えず、ベンチから立ち上がって帰ろうと振り向くと。


人が立っていた。
心なしかあの時の彼女に雰囲気が似ている気がする。
どうしようか話し掛けて違ってたら……。


でも、もしかするとあの時の彼女かもしれない……。
迷いながら話し掛けた。



「……もしかして三日月の夜にここで会わなかったかなぁ?」



「あ、は、はいっ。
あの時のパン美味しかったです」


やっぱりあの時の彼女だった。
やっと会えた。俺は嬉しくなり内心でやった、って言っておいた。


ベンチに座るように言うとこっちに歩いて来た。

彼女の横にもう一度座る。


「帰る所だったんじゃないですか?」


「いや、もう少し月を見ていこうかなと思ってさ」


この間と同じように彼女は空を見上げた。



< 22 / 281 >

この作品をシェア

pagetop