Crescent



ただ黙って一緒に月を見ているだけなのに。

あの時と同じ。
もう少しだけこの人と一緒にこのままで居たいと思った。



時計をみてみるとそろそろ帰らないとだ。
ここに来たらまた会えるかな?


「ここへは良く来るんですか?」


「時々は寄るかな……」


「また……見に来たら会えるかな?」


「えっ?」


小さく呟いたつもりの言葉は相手に聞こえてしまった。


「あの…えっと…ですねぇ。
家から見る月よりもここでの方が良く見える気がするんですよね。

だから、また見に来たいなって……。
あっ、でも私なんかがいたら邪魔ですよね?」



焦って繋いだ言葉の後に沈黙が続いた。やっぱり私なんていたら邪魔か。



「別に……見にくればいいよ。
また会えたら一緒にこうやって見よう」


会えたら一緒に見ようって言ってくれて、ちょっと嬉しかった。


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