Crescent
きっと俺から話すのを待っていたのかもしれない。
待っていたのに話さない俺にしびれを切らしたんだろう。
さっきから、こっちに琴音ちゃんの話題ばかりをふってくる。
「琴音ちゃんねぇ、元カレと会うんだって」
ちらっとこっちを窺うように見た。
「元カレ?」
会うってどういう事だ?
別れたんだろう。
何で今さら会う必要がある?
俺にフラれて自棄になってって、そんなわけないか。
「何、動揺してるの?」
「動揺なんかしてませんよ」
「琴音ちゃんが元カレとやり直しても店長は平気なんだ?」
平気なんかじゃない。
握った手に力を入れて必死で平常心を保った。
自分の気持ちを偽って彼女を傷つけた俺にはとやかく言う権利はない。
「琴音ちゃんが誰とやり直そうと関係ないですね。
彼女とはもう友達でもないですから」