Crescent
もうバカみたい。
澤野さんとどうにかなるわけないのに……。
でも、あんな風に近い距離で……勘違いだってするでしょう。
もう、本当に恥ずかしい勘違いした。
さっき間近で見た澤野さんは睫毛も長くて、整った顔立ちをしていて思わず見とれた。
それに切れ長の目にじっと見つめられて動けなかった。
手を繋いだ時も隼人じゃない男の人とあんな風に歩くとは思ってなくて、落ち着かなかった。
なんだか思い出すと頬が熱くなってボーッと家の前で立っていると、お姉ちゃんが家から出て来た。
「琴音、何突っ立っているの?」
「べ、別に……お姉ちゃんこそ、こんな時間にどこか行くの?」
「洗顔クリームは無かったの忘れててね、コンビニに行ってくる」
お姉ちゃんは自転車に乗って家からそう遠くないコンビニに行ってしまった。
私は自分の部屋に入って着替えてから、ベッドの上に倒れる様に横になった。
あのパンは凄く美味しかったけど、轢かれそうになったりなんか恥ずかしい勘違いしたり……
今日はなんだかドッと疲れた。