Crescent
グイッ!!
腕を引いて身体を引き寄せる。
それでも車は間近を走り去って行った。
だいぶ日が長くなって、まだ充分周りも見えている筈だけど……。
運転手の気付くのが遅かったのだろう。かなりのスピードも出ていたようだ。
さっきから、じっと動かない彼女が心配になった。
強く引きすぎてしまったかもしれない。
「もしかして、足をひねった?」
「……大丈夫です」
良かったケガはしてないようだ。
「そうか……。
良かったぁ。
ビックリしたよなぁ」
ケガはしてないようだけど、足元がふらついていた。
危なっかしいな……。
彼女の手を掴んだまま歩いた。
「あの……澤野さん?
そろそろ手を放して貰えませんか?」
「駄目だよっ」
「えっ?なんで……」