Crescent


「一人で行けます」

そう言う琴音ちゃんに気付かないフリをして手を放してあげなかった。


子供扱いしているつもりはなかったけど。
ムクれた顔がなんだか可愛いくて、つい意地悪をしてしまった。


手を繋いだまま彼女の家の手前まで来て立ち止まると。
ふわぁっといい匂いが琴音ちゃんから香ってきた。
その甘い匂いに惹かれるように思わず髪に触れてしまった。


「あの……澤野さん?」



距離が段々に近づき焦ったような琴音ちゃんの声ではっとして離れた。


「ちょっとっ待ってっ……」


「髪の毛に葉っぱが付いてた」



「……葉っぱ?」


「琴音ちゃん、冷えてきたし家の中に入りな」



さっきのは、まずかったよな。
何やってんだよ。


琴音ちゃんとは友達のままの関係がいいんだ。



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