Crescent



「何?」


「別に……」


お姉ちゃんの口からアンジュとか店長って言葉が出る度に澤野さんを恋しく想う気持ちが増していった。



声だけでも聞きたくなって携帯を開いてかけた。



《琴音ちゃんランチに来てくれてありがとう》


この間ランチに行ったとき以来の澤野さんの声。


《友香が美味しかったから、また行きたいって言ってました。
それで――――――――そう云えば明日アンジュは定休日ですよね?》


《そうなんだ。
だから明日はゆっくりするつもり》


《休みが終わったらまた忙しくなりますよね。
明日はゆっくり休んで下さい》


《ありがとう》



暫く話しをしていたけど話しが途切れた。



《……あの……じゃあ、そろそろ切りますね》


《うん、琴音ちゃんおやすみ》


《おやすみなさい》そう言って切った。

声だけでも聞けたら。
会いたい気持ちが鎮まると思ったのになぁ……。



電話を切った途端、淋しくなってしまい。
余計に会いたくなった。


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