君と私を、夜空から三日月が見てる
似てる・・・
間違いない・・・
柿坂君に似てるよ!!
誰かに似てると思ったら・・・
あの時、お母さんに会いにきた、あの男に人に似てたんだ・・・!


そんな事に私が気づいた時、不意に、誰かが私の肩を叩いた。
私は、ハッと後ろを振り返る。

「長谷川さん」

そこに立っていたのは・・・
私が左遷された清掃部門の事実上の上司、6才も年下のスーパーイケメン柿坂 海里だったのだ!
しかも、イルミネーションがきらきら光る東京湾wonderlandにはまったく似つかわしくない作業服姿!
その上、片手に光沢度測定器を持っている!

「柿坂君!!?
なんでこんなとこにいるの?!
ここ東京湾wonderlandだよ?!」

私は驚いて柿坂君にそう聞く。
柿坂君は、あははって無邪気に笑ってこう答えた。

「何いってんの?
デートに来たんでしょ?」

「え!??
私と柿坂君が!?」

「だってさ~
年甲斐もなく、東京湾wonderlandのプリンセス城の前でキスしたいなんて、長谷川さんが言うから」

「ちょ!!!年甲斐もないって何よ!!
失礼な!それに、私そんなこと言ってない・・・・・よ!」


「そうだっけ?」

柿坂君は、母にハグしたあの男の人とよく似た笑顔でそっと私に手を伸ばす。


え?
何?
ちょっと待って!
何この展開!?


「朝香・・・」

やけに甘い声で、柿坂君は私の名前を呼んだ。
それこそ年甲斐もなく顔を真っ赤にした私を、彼の大きな腕が優しく抱きしめる。
あのミステリアスな瞳がまっすぐに私を見つめて・・・・
それで・・・
その唇が、私の唇に近づいてくる・・・・!?


ちょ・・・!
ダメ!
これはまずいよ!
だって、私、昨日、配属されたばっかりだし!
柿坂君は6才も年下だし!!
社内恋愛はダメだよおぉぉぉぉ~~~

ああ、でも・・・
顔の良い年下の男の子に迫られるのとか・・・
悪くない・・・かも?

でもダメ!!
ダメだよ!
こんなのは・・・ダメだよ!
でも、悪い気はほんとしないけど・・・!
でもでも、これはまずいよ柿坂君!!
ダメダメ!
ダメだよおおおぉぉぉぉ~~~~!!






「ダメだよおおおぉぉぉぉぉ~~~~~~っ!!!!」

とてつもない音量の自分の声で、私は、ハッと目を覚ました。
同時に、ばたばたと廊下を走る音が聞こえてきて、私の部屋の前で立ち止まると、からものすごい勢いでドアが開いた。


「朝香!?
どうしたの?!
大丈夫!?
何かあったの!?」


それは、まぎれもなく、聞きなれた母の声だった。
私は、寝ぼけたままぽかーんと天井を見上げる。

あれ?
ここ?
どこだっけ?
私のアパート?
いや、違う・・・
この天井は・・・
実家だ・・・・
そうだ・・・
昨日は初仕事で体力を使い切って、ご飯作るのも買うのも面倒で、実家に帰ってきたんだっけ。

ぼんやりとそんなことを考え私の視界に、心配そうな母の顔が飛び込んできたのだ。


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