君と私を、夜空から三日月が見てる

自問自答して、軽くショックを受けた私。

カーペットに倒れたまま、うっすらと目を開けた柿坂君が、そんな私をミステリアスな瞳でふと見つめた。
その視線が妙に色っぽくて、私は三度どきっとしてしまう。

「女性不信・・・うーん・・・そうと言えばそうなのかも」

「あの、私も一応、女ですが・・・」

ちょっと拗ねたので、大人げなくそう言った私。
柿坂君は、薄い唇で可笑しそうに笑った。

「ほんと、なんで家に上げたんだろう、俺？」

「なんか、すごーく失礼な言い方！
まあ、私はこの通りアラサーだから、柿坂君にしてみたら、女と認識できる年じゃないのかもだけど！」

そう言ったあと、我ながら大人げなかった！と思わず後悔した。
流石の柿坂君も、ムカッとしたかな？
私は、ばつが悪くなりつつ、横になっている柿坂君を見る。
すると、何故か彼は、ムッとしてるどころか、むしろどこか嬉しそうな表情で、小さく微笑んでいたのだ。

「えー？悪気はないんだけど・・・
でも、そうやってハッキリ感情を出してくれると、むしろ助かる」

「え？」

「なんか、そのストーカー女もさ、その前に振った子もさ、表面上は納得したように見せておいて、結局そんなだったし。
長谷川さんみたいに、ズバって物言う人の方が、安心だし信用できそうだし。
それに・・・」

「それに、なに？」

そう聞き返した私に向かって、柿坂君は、柔らかく微笑したまま、その長い指先を持ち上げて、私の頬をふわりと撫でたのだった。

「！？」

その瞬間、わかりやすく赤くなった私。
そんな私を、ミステリアスな瞳で見つめたまま、柿坂君は、やけに優しい声色で言ったのだ。

「すげー頭の良さそうな、ちゃんとした女の人だよ、長谷川さんは。
ちゃんとしてそうだから、つい、家に上げちゃったのかも・・・」

少し冷たくて長い指先が、私の頬を撫でてふっと離れていった。
あまりにも魅力的でかっこよくて、それでいて無邪気でミステリアスな柿坂君の笑顔に、私は、すっかり魂を抜かれて、ぽかーんと見惚れてしまう。
撫でられた頬に残る、彼の指の感触が、なんだか懐かしく感じられて、ますますどきどきしてしまった。

「も、もう・・・っ！
と、年上のおねーさんを、か、からかわないでよね！」

こんな年下の男にドギマギさせられて、なんだか悔しいから、私は、思わずそう言った。
動揺して声が震えたのは聞かなかったことにして！

柿坂君は、可笑しそうに笑ってから、また、長い睫毛を伏せる。

「配属されてきたのが、長谷川さんで・・・よかった」

くったくなくそう言った彼には、きっと、下心なんて全然ないんだと思う。
むしろ、下心があるのは私のほうかも。

カーペットに頬を埋めて、眠そうに目をこする姿がやたらと可愛いのよ！！
ああ、もう！
なんなのこの男は！！
悔しいやら楽しいやらで、私の心は支離滅裂だよ！！