君と私を、夜空から三日月が見てる
そのうかつな一言ために、私は、春の人事異動で、まさかの『清掃部門』に移動させられてしまったと言う訳なのでした。
ああ・・・
もう・・・
人生投げたい・・・
呆然自失で『清掃控え室』というプレートを見つめる私の後ろを、先ほどから、「おはようございます」と言いながら、売り場の担当者たちが通りすぎていく。
私はそのたびに「おはようございます・・・」と力なく答えて、ため息をつくばかりだった。
これから・・・どうしよう?
社員のままだけど、給料も一応今までのままだけど・・
もう、はっきりいって・・・
清掃なんて底辺の仕事・・・
したくない!
私の積み上げてきた、キャリアが・・・・!!!
そんなことを思って、ますます肩を落とした、その時だった。
さっきから通り過ぎるばかりの足音が、ふと、私の背中で立ち止まった。
私の頭の上のほうから、どこか幼さを残す低めの声が、もう聞きなれた台詞を言ったのだ。
「おはようございます」
「お・・・・・おはよう・・・ございます」
ぼけーっとしたまま、そう答えた私。
声の主が、更に私に向って言ってきた。
「あの~・・・すいません、そこ、邪魔です。
どいてくれません?」
「!!」
私はハッとして、後ろを振り返った。
そんな私の目に飛び込んできたのは、壁にもたれかかるような姿勢の若い男の子。
見上げるほどの長身。
栗色に染められている、少し長めでふんわりとした癖毛。
それから、長い前髪から覗くようにこちらを見てる、二つの瞳。
奥二重で切れ長な目元が、驚くほどミステリアス。
端正な顔立ちは、どこか中性的。
こんなことを男の人に言うのは失礼かもしれないけど、すごく綺麗な青年。
掃き溜め部門には不釣合いなほどのイケメンが、そこに、立っていたのだ。
私は、ぽかーんと口をあけて、少しの間そのイケメンの顔を見つめてしまった。
あれ・・・・?
なんだろう・・・
この子・・・
あれ・・・・?
どこかで・・・
見たことがある・・・
この綺麗な顔・・・
どこかで、私・・・
見たことが・・・
どこで見たんだろう・・・?
いつ見たんだっけ・・・・?
その時私は、まだ何も思い出せないでいた。
でも確実に、私は、この青年に似てる人を見たことがある。
「あの~・・・それ、よだれ垂れちゃいますよ?
腐っても女子っしょ?
口閉じないと、ただのあほっぽいおばさんに見えますよ」
その綺麗な顔には不釣合いな、とてつもなく失礼なその台詞が、私を一瞬で正気に戻した。
「ちょーーーーーっ!!
おばさんて何よ!!!
私まだ28なんだけど!!!!」
思わず叫んだ私を、通りすがりのチェッカーさんがまじまじと見ていく。
きょとんとした表情で私を見つめていた綺麗な顔のその青年は、関心したよう口を開いた。
「うわぁ・・・・今の一言で、バックヤードのほぼ過半数を敵に回した!!!」
「・・・え?」
再びぽかーんとする私の顔をしみじみを見ながら、彼は、可笑しそうに笑って清掃控え室のドアを開けた。
「今日から配属になった長谷川さんでしょ?
失言で此処に飛ばされたって、上から聞いてるから大丈夫」
「失言・・・・なんて!!」
「え?したからここにまわされたんっしょ?
まぁ、中入ってよ」
「・・・・・・・・・。」
私は、思わず口をつぐんで、彼の言う通り、清掃控え室へと足を踏み入れた。
ああ・・・
もう・・・
人生投げたい・・・
呆然自失で『清掃控え室』というプレートを見つめる私の後ろを、先ほどから、「おはようございます」と言いながら、売り場の担当者たちが通りすぎていく。
私はそのたびに「おはようございます・・・」と力なく答えて、ため息をつくばかりだった。
これから・・・どうしよう?
社員のままだけど、給料も一応今までのままだけど・・
もう、はっきりいって・・・
清掃なんて底辺の仕事・・・
したくない!
私の積み上げてきた、キャリアが・・・・!!!
そんなことを思って、ますます肩を落とした、その時だった。
さっきから通り過ぎるばかりの足音が、ふと、私の背中で立ち止まった。
私の頭の上のほうから、どこか幼さを残す低めの声が、もう聞きなれた台詞を言ったのだ。
「おはようございます」
「お・・・・・おはよう・・・ございます」
ぼけーっとしたまま、そう答えた私。
声の主が、更に私に向って言ってきた。
「あの~・・・すいません、そこ、邪魔です。
どいてくれません?」
「!!」
私はハッとして、後ろを振り返った。
そんな私の目に飛び込んできたのは、壁にもたれかかるような姿勢の若い男の子。
見上げるほどの長身。
栗色に染められている、少し長めでふんわりとした癖毛。
それから、長い前髪から覗くようにこちらを見てる、二つの瞳。
奥二重で切れ長な目元が、驚くほどミステリアス。
端正な顔立ちは、どこか中性的。
こんなことを男の人に言うのは失礼かもしれないけど、すごく綺麗な青年。
掃き溜め部門には不釣合いなほどのイケメンが、そこに、立っていたのだ。
私は、ぽかーんと口をあけて、少しの間そのイケメンの顔を見つめてしまった。
あれ・・・・?
なんだろう・・・
この子・・・
あれ・・・・?
どこかで・・・
見たことがある・・・
この綺麗な顔・・・
どこかで、私・・・
見たことが・・・
どこで見たんだろう・・・?
いつ見たんだっけ・・・・?
その時私は、まだ何も思い出せないでいた。
でも確実に、私は、この青年に似てる人を見たことがある。
「あの~・・・それ、よだれ垂れちゃいますよ?
腐っても女子っしょ?
口閉じないと、ただのあほっぽいおばさんに見えますよ」
その綺麗な顔には不釣合いな、とてつもなく失礼なその台詞が、私を一瞬で正気に戻した。
「ちょーーーーーっ!!
おばさんて何よ!!!
私まだ28なんだけど!!!!」
思わず叫んだ私を、通りすがりのチェッカーさんがまじまじと見ていく。
きょとんとした表情で私を見つめていた綺麗な顔のその青年は、関心したよう口を開いた。
「うわぁ・・・・今の一言で、バックヤードのほぼ過半数を敵に回した!!!」
「・・・え?」
再びぽかーんとする私の顔をしみじみを見ながら、彼は、可笑しそうに笑って清掃控え室のドアを開けた。
「今日から配属になった長谷川さんでしょ?
失言で此処に飛ばされたって、上から聞いてるから大丈夫」
「失言・・・・なんて!!」
「え?したからここにまわされたんっしょ?
まぁ、中入ってよ」
「・・・・・・・・・。」
私は、思わず口をつぐんで、彼の言う通り、清掃控え室へと足を踏み入れた。