君と私を、夜空から三日月が見てる
ふんわりと、私の髪をナデナデする大きな手。
香水のようないい匂いが、優しく私を包み込む。
不覚にも、いつもこれにどきっとさせられてしまう。

「怒んないでよ、ほんとに、悪い意味で言ったんじゃないんだ。
うんと、俺、たまに言葉違い?みたいなことするから・・・
俺もボスも、どうも女にいい思い出ないから。
おばちゃん連中ならいいんだけど、なんていうか・・・
おばちゃんになってない若い歳なのに、和んで話せる女の子っていないから、うんとつまり・・・
長谷川さんは、希少種?」

「ぶふっ」

そのしどろもどろの説明に、私は思わず吹いた。

「希少種とか!!!」

「そうそう、希少種なんだよ・・・ほんとに。
うんと、だから、怒んないで」

ますます私の髪をナデナデして、柿坂君は、今度は妙に魅力的で無邪気に笑った。

くっそぉ・・・
顔がいいってほんと得だよね!!!!!!!!

私は、すっかりその笑顔にほたされてしまう。

「しょ、しょうがないな!!お詫びにカップコーヒーおごってね!!」

とかなんとかいいながら、顔なんかもう真っ赤なんだ、私!!

柿坂君は、もう一度無邪気に笑った。

「わかった~!」


清掃のイケメンどもめ!!
幼稚園児じゃないんだから、ナデナデでなんでも済むと思うなよ!!
このままじゃ済まされないぞ!
いまにみてろよ!!!!

私は思わずそんなことを心で叫びつつ、真っ赤な顔のまま、次の仕事に取り掛かったのである。

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