君と私を、夜空から三日月が見てる
      ☆
私は大の大人なのに!
あの連中め!
ナデナデすれば機嫌治ると思うなよ!!
私は大人の女なんだぞぉぉぉ!!

なんて、意気込んで怒ってたあの日から更に一週間ほど経った日のことだった。
一連の仕事の流れも覚えてきて、アクの強いパートさんの存在にも気づき始めた頃、私は、柿坂君と初めての遅番
勤務に就くことになった。

清掃控え室で、深夜作業のパートさんがたにメモを残したり、警備室に提出する日報を書いてたりしてた柿坂君が、ふと、傍らの私に向って言った。

「長谷川さん、立体駐車場のゴミ回収と風除室の清掃お願いします~
ハンディで掃除するだけでいいんで」

「はーい」

「あ・・・・っ!
やっぱ、ダメだ!
待って長谷川さん・・・・!」

ハンディクリーナーを持っていそいそと立体駐車場に行こうとしていた私を、何か思い出したように呼び止めた柿坂君。

「ん??」

私は、片手にクリーナーを持ったまま柿坂君を振り返る。
柿坂君は、綺麗な眉毛をちょっと眉間に寄せてなんだか心配したような顔つきで言うのだった。

「さっき、警備さんから連絡あって。
立体駐車場で不審者出たって、で、やっぱ立体は俺やるから店内お願い」

その言葉にきょとんした私だけど、柿坂君はなんだか事務仕事で忙しそうだし、早く私が覚えて手伝えればいいんだけど、まだ配属されてまもない私は、まずは清掃の基本作業を覚えることが先決と思ってたんで、にこっと笑ってこう返した。

「大丈夫だよ。私、そんな可愛くないし、不審者に狙われるようなタイプじゃないもん!
そもそも、私、高校時代からずっと痴漢とかあったことないしね!
柿坂君は日報早くやっちゃうといいよ、またボスに怒られるから!」

私はあっけらかんとそう言って、清掃控え室のドアを開けた。
柿坂君は、どこか困ったような声色で、そんな私の背中に言うのだった。

「ああ、じゃあ、終わったら俺もすぐいくから、何か会ったらPHSで連絡して!」

「はーい!」

私は、あっけらかんとそう答えて立体駐車場へと向った。


閉店間際の店内。
食品売り場には人はいるけど、2F3Fの衣料品売り場や家電売り場には、お客さんはまばらだ。
私は、ハンディークリーナーを持って、立体駐車場のゴミ回収へ向うために、エレベーターで屋上階まで上がっていった。

屋上、5F、4Fと上からゴミを回収して、まったり掃除もしてこよう!

私は意気揚々と屋上階でエレベーターを降りて・・・

そして、仕事安請け合いしたことを思い切り後悔した・・・




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