君と私を、夜空から三日月が見てる
彼の大きな手のひらは、まるで幼児でもなでるように、私の髪を優しく撫でた。

「・・・・・・・・・・・!」

一瞬放心状態になった私。
そんな私をまっすぐで綺麗でミステリアスな瞳がじっと見つめてる。
穏やかで自然で優しい表情で、やけに大人びて見えた彼の微笑が私の脳みそを色んな意味で猛攻撃していた。

く~・・・・っ
またこうやって・・・・!
ナデナデで年上のおねーさんを翻弄するのか貴様ぁぁぁぁぁ!!!

って叫びたい気持ちだったのに、あまりにも美しすぎるその笑顔にほだされて、おねーさん、まったく反撃もできず顔を真っ赤にしててひたすらフリーズするばかり。

ふふふふ、不覚うぅぅぅぅぅ!!!

そんな一瞬の心の葛藤を知ってか知らずか、柿坂君は優しい微笑みのまま、無邪気な口調で言うのだった。

「配属されてきたの、長谷川さんで本当によかったな・・・
いてくれて助かった・・・・!
ほんとに!!」

「・・・・ど、どど、どういたしまして!!!!!!」

「なにその反応?」

「いいえ、普通です!!!!!!」

明らかに挙動不審なのは判ってる!
わかってるのよおぉぉ!
でも、年上のプライドがそれを認めることを許さない!
ああ・・・
私ってつくづく面倒くさい女だなって思う・・・
わかってるけど、直らないんだよね・・・

だけど、そこを責めることもなく、柿坂君はなんだか楽しそうにあははって笑って言うのだった。

「でっすよね~!普通ですよね~!」

「普通です!なので!!
大人の女をからかってナデナデするのやめてね!!」

「え~?だってこうして欲しそうだったから!」

「こうして欲しそうって・・・・!」

そう反論しかけた私の言葉を遮るように、笑いながら柿坂君は言葉を続ける。

「あ!そうだ・・・長谷川さん、今夜仕事終わってから何か予定ある?」

「え!?」

なんでこの人はこう、急にとっぴなことを聞いてくるのか!!!
ここで見得を張って「あるよ!」と答えたほうがいいのか・・・・
素直に「ないよ!」と答えるべきか・・・・

なんて一瞬そんなことを思った私。
でも、柿坂君の言葉のほうが早かった!!

「暇なら遊びいきましょうよ!!」

「いくいく!!!」

プライド云々を考える暇もなく、私は思わず、そう即答してしまった。

しまった!!!
ここは大人の女らしく少し間をおいて「ああ・・・いいよ?今日は予定なかったから?」とか答えるべきだったかも!!

内心でそんな葛藤しつつ、そんな心に反して、私、確実に満面の笑顔になってる・・・・!
柿坂君は言うのだ。

「じゃあ、仕事終わったらいきましょうか」

「はーい!」


やばい・・・
なにこれ・・・
嬉しい・・・!!
仕事終わった後の楽しみ増えた!




なんて思ってたのが、そもそも間違えだったんだよね・・・
それに気づくのは、ここから数時間後のことだったのよ!!!



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