君と私を、夜空から三日月が見てる
                 ☆
一時間残業になった柿坂君を待ってた私。

仕事終わるまで待ってるとか!なんかこういうの・・・新鮮!!
気を抜くとニヤニヤしてしまうので、そこは顔を引き締めて、どこか行くことになるなんて思ってもいなかったから、私、普通にジーンズとシャツだけど・・・
別に・・・
いい・・・かな?

いつものように駐車場への歩道を歩きながら、隣を歩く柿坂君が何の気もなくこういった。

「うーん・・・車どうします?一台でいきます?別々に行きます?」

その言葉に、内心ドキドキしてしまった。
一台だったら、車内という限られた空間に二人きりとかっていうシチュエーションだし、それもそれでなんか緊張するというか、でも嬉しいっていうか。
短い間に打算した私の内心なんて知る由もない柿坂君は、不意に「あ・・・」って何かを思い出したように声を上げた。

「ん?どしたの?」

私は、きょとんとしてそんな柿坂君の顔を見上げる。
柿坂君は、困ったように眉間にしわを寄せて笑った。

「しまった~・・・今日、別の用事もあったんだ・・・
うーん・・・長谷川さん、すいません、俺の車で来てもらってもいいですか?
遅刻した時のいい訳に、付き合ってもらうかもしれないんですけどね・・・」

「え???」

言葉の意味がわからず、相変わらず高い位置にある彼の顔をまじまじと見つめる私。
そんな私を、柿坂君はまっすぐに見つめ返すと申し訳なさそうに笑って、またしても・・・・!
すぅって手を伸ばして、私の髪をナデナデしてきたのだ!!
いつもながら顔を真っ赤にしてしまった私。
そしていつものようにこう言ってしまう。

「ちょ~~~~!
あのね!何度も言うけどね!
子供じゃないんだから!!」

「ああ、すいませんすいません!
でもほら、なんかこう、長谷川さんて、ついこうして欲しそうな顔するから!」

「してません!!」

「え~・・・?そうかな?」

「そうだよ!!もう、私は一体どんなイメージなの?
そんなに物欲しそうな顔してる?!」

「はははは!物欲しそうとか!!孤児みたいな表現すね!」

「はぁ?!」

怒ったような顔はして見せるけど、でも私、こうやって柿坂君と話すのって楽しいって最近よく感じてるんだ。
元彼とはこんな風にふざけて話すことってあんまりなかった気がするし、プライドが先行してなんかこうよくぷんぷんしてたし。
今もついぷんぷんするけど、柿坂君は、まるで私の本心を見透かしてるようにこうやって、からかうみたいに笑ってくれるから、なんかちょっと楽なんだよね・・・

やっぱり私・・・
ただの飢えた女なのかな・・・!?

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