ファンレター
「そうか。君たち、布施原さんと同じ出身校ってことは、鷹宮十くんと同じ高校ってことかな」
その一声に、腰を抜かすほどの奇声が上がった。
そこに十が登場したわけでもないのに、十の名前が出ただけでこれだ。
もちろん私の胸も、頭まで揺れるほどの大きな振動に包まれた。
十のことを聞けると、勝手に頰が緩んでしまう。
「実は僕があのCM撮ったんだよね。十くんにも会ってるよ」
「キャー、ホントに〜?」
「すごーい!」
田舎高校の団体はもう大盛り上がり。
「濱田サキと十くんが熱愛って本当ですかー?」
唐突な質問まで平気に飛び交う。
「えー!僕もそこまでは知らないよ。まぁ、仲はいいみたいだけどね。あ…、あんまり口が軽いのは放送局の人間としては失格だから、ここらへんで許して」
若いカメラマンは控えめに微笑んだ。
そうだ、この人。
あの時、十の電話の向こうにいた人だ。
私の顔を見てわかるはずもないけど、なんとなく無意識に人混みへ姿を隠した。
カメラマンは、女子のサイン攻めにあってる。
とりあえず、十と関わった人に対しては、みんな尊敬の眼差しらしい。
そういえば多美は……?