ファンレター
「た、多美…(汗」
一瞬そこにいた四人の目が丸くなって、変な沈黙が流れた。
私の背中には、汗も流れる。
そのカメラマンは何か言いた気だったけど、それをこらえて何も言わない様子だった。
「あ、ありがとうございました!」
私は多美の腕を引っ張って、出口へと走った。
十とのこと、何か勘付かれたかな。
ううん、それより早く集合場所に戻らなきゃ!
山口にまた何を言われるかわからないし。
入り組んだ感情が、私の中でごちゃ混ぜになる。
十のこと
カメラマンのこと
布施原さんのこと…
そしてただ目の前にあらわれた仁王立ちの山口に、私は頭を下げることしかできなかった。
「お前達二人には、妙に縁があるようだな!この先もしっかり見張らせてもらうぞ!」
「す、すみませんっ」
うー…っ
完全に目をつけられた。
「はいこれ。記念のキャラクターストラップよ」
そんな横から、空気も読まず小さく顔を出してくる担任。
なにやら緑色のカエル?みたいな宇宙人?みたいな放送局キャラクターのストラップが、全員に配られたようだ。
「今度何かやらかしたら、どうなるか分かってるな!」
山口が覆いかぶさる。
あー、まずいなぁ…
でも、多美も負けてなかった。
「この旅行組んだの、誰だと思ってんのよ!ほとんど私だってこと教頭に話すからね」
「ばか!あれはあれだろ、ほら……、わかった!このオレのストラップもやるから」
「同じもの二個もいらないわよ!」
多美と山口。
意外といいコンビのようだ。