ファンレター
何に腹が立っていたのかな。
何が悔しかったのかな。
「淋しいとか思ってくれないの?」
「わたしが?どうしてそんなこと思うのよ。女の子にいっぱいモテてよかったじゃん。それに、十が人気者になったら、幼なじみとして私も鼻が高いよ」
いつだって私は、強がりばっかり。
「でも、オレと幼なじみだって誰にも言わないつもりだろ?」
十が急に立ち止まった。
「……だって、十に迷惑かけるもん」
「困るのは自分じゃなかったのかよ」
「でも、もう十の方でしょ!今から売れていこうとする人に、仲のいい女の子がいたんじゃ、邪魔になるだけだよ」
そう、邪魔なのはもう私なんだから。
悔しいけど、それが事実。
「ちょっと待てよ」
「…っ」
いつの間にこちら側に渡ってきたのか。
十が私のカバンを引っ張った。
こんな風景、久しぶりだ。
「オレは淋しいよ。学校で話せないことや、知らない人のふりすることとか。あれからずっと遠慮して、家にだって遊びに行かなかったし」
「もうっ!どうしてそんなふうに甘えたことばっかり言うのよ。そんなんじゃ、ただの地元のアイドルで終わっちゃうんだから。もっとビッグになればいいじゃん。それで、テレビとか、映画とかいっぱい出てよ。そしたら私だって、みんなに十と幼なじみだって自慢しちゃうもん。他人のふりなんて絶対してやらないもんっ!」