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脱走者の恋心
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脱走者の恋心
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ネオンの光る夜の街に、白い服がほんわり浮かぶ。
昼間のカフェは、きれいにライトアップされた夜のFUTURE SPACEに変わって。
中からは体の芯に響くような低音ミュージックが流れ出してた。
下見のおかげで、8時前には無地到着できたけど、一体どうやって中に入ればいいのかさえもわからない。
私は入り口の前を、ただウロウロするばかりだった。
そんな風に怪しい行動をしてたせいか、突然入り口のお兄さんに呼び止められた。
「君、中学生?」
まずい。
「ち、違いますっ!高校生です」
失礼な!
って、思わず言い返してしまったけど、高校生が来てもよかったのだろうか。
そう言えば辺りに見える人たちは、みんなきれいに化粧をしてて。
こんな色付きリップなんかじゃ、中学生に見えてしまうのも仕方なかった。
私を横目に、カップルや女の子のグループが次々と中へ入って行く。
どうすれば入れるのか。
多美がいてくれれば、なんとか言葉でやり過ごせるたのに。
「チケットはあるの?」
「は、はい?」
え?チケットがいるの?
後ろから聞こえてきた大人びた男の人の声に、とっさに反応して振り向いた。
うっ…こ、これは
これが、ホストと言うのかな?
黒いスーツで茶色の髪をしてると、どうもそういうイメージしかない。
「ご苦労さまです大北さん!お客さんの入り、順調ですよ」
入り口のお兄さんが、その声の主に頭を下げた。
え?大北?