ファンレター
「やっぱりここは、カップルが多いなぁ。こっちもカップルに見えてるのかな」
なんの気もなく言っただろう十の言葉に、恥ずかしくなるくらいドキドキした。
昔はそうだった。
よくカップルだって、勘違いされてたよね。
いつも一緒にいるからって。
仲よさそうに戯れあったるからって。
今も、そう見えることを願うけど。
「誰も周りのことなんか、気にしてないんじゃない?」
それなのに、結局こんな調子の私。
照れ隠しでしか返せない自分に、すごく呆れてくる。
どうして、素直になれないのかな。
自分で気が付いた気持ちを、そのまま正直に伝えればいいだけなのに。
そうだ…
自分に正直になれ、涼。
本当に濱田サキと熱愛中なら、十が今ここにいるはずなんてない……はずだから。
静かに隣の十を見上げる。
その距離がびっくりするくらい近くて、思わず顔を戻してしまった。
落ち着こう。
鼓動が邪魔だ。
柵を伝って通じて、十のところまで伝わってしまいそうなくらい大きい。
大丈夫、言えるよ。
十が好きって、言いたいもん。
「十……」