ファンレター
「そっ、そういえばさ。こっちの人達ってやっぱり田舎の私達とは違うよね。女の子はみんなキレイだし、もちろん濱田サキさんだって、生で見てもすごくキレイだった」
焦りながら早口で話す私を、十がずっと見つめてくる。
「あ、それで駅に着いた時なんかね、若いカップルが人がたくさんいるっていうのに平気でキスなんかしちゃってて。東京の人って度胸があるなぁとか、憧れるよねとか多美と二人で話してて…、なんていうか……」
あ…、あ…
あーーっ!
なんて、なんて
なんて話をしているんだ私は!
それで余計な想像が止まらなくなったくせにっ
勢いで作られた笑顔が、やり場を失った。
考えるな!
思い出すな涼!
浮かべてしまえば、なかなか消えない光景。
とりあえず、十から視線をそらしたい!
でも…
虜になってしまいそうな十の目から、私の視線は逃げられなかった。
「あの、あのね。その…」
「羽田さんて、キスしたことあるの?」
「えっ…」
ドクンドクン、ドクンドクン…
ストレートすぎて、一瞬言葉に詰まった。
十ってば、相変わらず素直でまっすぐ過ぎる。
普通そんなこと平気で聞けないよ!
「な、ないよ!ないです。全然ないです」
恥ずかしながら、一度もない。
そのくせ想像だけはリアルで驚く。
私はチラッと横目で十を見て、言葉を続けた。
「……十は、あるの?」
「………」