ファンレター



それは、あってもおかしくないよね。

あんなにキレイな濱田さんと熱愛とか書かれるくらいだし

十も今は都会の高校生なわけだし…



そんなこと、考えたくないけど。



沈黙を消すように、また船が鳴いた。

視界にゆっくり、景色が戻る。

夜景、こんなにきれいだったんだな。

止まった時間と流れる時間が、同時に存在するようだった。



言葉もないまま、見つめ合う。

十の視線が、苦しい。

そんなに見られたら、息できないよ。



さっきみたいに、なんか話してよ。




「…今、したいって思った」


「えっ…」



二人の時間が、大きく揺れる。



ドクンドクン、ドクンドクン…



なに…?

十は、今なんて言ったの?



聞き間違いじゃないなら…







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