ファンレター
私は黙ってうなずいた。
山口の罰よりも、今は十と離れることの方が怖い。
次は…いつ会えるか分からない。
十が一歩休んで立ち止まり、私と並ぶ。
夜街の明かりは、子供っぽさを失わせて。二人の間には、似合わなかった色気を際立たせた。
人の流れに逆らうように立ち止まって、お互いの距離を手で感じとる。
十…
離れたくない
一緒にいたいの…
好きで
好きで
もう、胸がいっぱいいっぱい…
「十が、好き……」
うつむいて、ぎゅっと目を閉じた。
きっと、口からでた言葉じゃない。
胸の奥から、あふれ出た言葉。
もう、後悔はしたくないって。
不安の中で、十を見上げる。
十は一瞬目を丸くして、それからフッとやさしく笑った。
あんなに騒がしかった夜街の光が、まったく目に入らないくらいに十が眩しい。