ファンレター
優しく触れる指先が、頰を撫でる。
ドキドキが、身体全部を支配する。
「オレだって、大好きだ」
「…っ」
呼吸が、止まる。
心臓だって、壊れそう。
十…
やがて音が消えて、視界もなくなった時
十の唇の感触だけが、私の世界を作り出した。
抑え切れない想いが
体全体を揺らす。
十の振動も、手から唇から、おさまることを知らずに、大きく伝わってきた。
十の吐息が離れても、ドキドキしたままの私。
どうすればいいかわからなくて、視線のやり場を探して。
でも次の瞬間、再び光は消えて、私の顔は広い胸に押しつけられた。
十の唇が、私のおでこにフッと触れる。
それから十は、顔全体で作る笑顔を私に見せた。
「すっごいドキドキした!」
「っ、十…」
もう…
こんな時まで
あきれるくらいに子供。
でも、こんなに好きになってた。
十……
胸の奥まで何かが射し込んでくるような感覚と、喉まで込み上げてしまうような心臓の音。
私は両腕を十の背中に回して、解けないくらい強く結び合わせた。
十が、大好き。