ファンレター
『涼へ
どうか間に合いますように。
パジャマ入ってるから、着替えてから扉開けてね』
指示通りに、部屋に設置された小さな浴室で着替えて、私は内扉を開けた。
「涼、やっと出てきた」
多美が笑顔で迎える。
向かい合う山口は、畳に向かって真剣な眼差し。
「あー、羽田。もう風呂から上がってきたのか。あと1ゲーム待ってくれ。絶対河野がインチキしてるはずなんだ!」
どうやらずっと、見回りを賭けて二人でゲームをしてたらしい。
「涼がシャワーから上がるまでに私に勝てたら、一緒に見回りするって言ったんだけど、山口ったらすっごい弱いの」
「おら!教師を呼び捨てにすんな!次は絶対勝つからなぁ!」
ありがとう、多美。
でも不思議だよ。
人って、つらい時より、幸せな時の方が恐いんだね。
あんまり幸せだと、次に来るのが悪いことなんじゃないかって
心がそう、予想してしまうんだ。