ファンレター




衣替えの日はちょっぴり新鮮だ。

気持ちまで新しくなったようで、入学の頃を思い出す。



あの時とは、何が変わった?

何が変わってない?

駅と桜の木は、そのままそこにあって、私も変わらずここにいる。



「もうそんな時期か…。月日の流れは、いつからこんなに早くなったんだろうなぁ」



おじさんは桜の木を見上げてた。

そうだ、あの時とは葉の色が変わって。

私の隣からは、呼び声が消えたんだ。



「おじさん、昔の週刊誌って残してない?」


「昔?昔って…どれくらいかな?」


「うーん、20年くらい前かな。だいたいその辺り」


「その頃か…。少しならあるかな。涼ちゃんが帰り寄るまでに、出しておいてあげようか」


「うん、ありがとう。早めに寄るからね」



ホウキで掃くには、まだ寂しい落ち葉の数。

おじさんはそれを、ゆっくり手で拾い集めてた。



まるで大切な季節の便りを受け取るみたいに、一枚一枚丁寧に。






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