ファンレター




「おじさん、布施原……布施原由起子さんて知ってる?」


「ん?…あぁ、知ってるよ。こっちが地元の女優だ。…どうかしたのかい?」


「ううん。東京でその人に会ったから」


「ほぉ、そうかい。それはすごい。…で、どうだった?元気そうだったか?」


「うん、やっぱり女優って感じで元気…、ん?いや、キレイだった…。おじさん知り合いなの?」



懐かしそうな話し方が、なんだか気になった。

おじさんは、慌ててゴミ箱に落ち葉を投げ捨てる。



隠し事を捨てるみたいに、とてもぎこちなく…。




「涼ちゃん、時間!」


「あっ、やばい!遅刻しちゃう。おじさん、また帰りにね」





走りながら考えた。

もしかして、おじさんの娘?



いや、おじさんとは名字が違うか。

あ、芸名だからかな。

それに、布施原さんが桜の木を気にしてたのも、それなら納得できるし。



本当に親子だったとして、それだとちょっとびっくりだ。



それより今は時間にびっくりだ!

また山口に捕まってしまう。

秋空とはいえ、走ればこの服装はまだ暑かった。





< 145 / 218 >

この作品をシェア

pagetop