ファンレター



NEOプロダクション副社長
尾根伸二


プロダクション副社長?

こんなに若いのに。

そんな人が、十のマネージャーなんてやってるの?



尾根さんは、多分まだ三十代も半ばだと思う。

エリート風格の真面目そうなタイプで、まだ暑さの残る気候の中でも、スーツ姿は涼し気だった。



「静かな街だね。東京とは大違いだ」



一見厳しそうな表情の中の、優しい口調。

いつもと同じはずの家の裏の堤防沿いは、空気を緊張させるような夕暮れに包まれる。

コンクリートの階段は、とてつもなく硬い鉄に変えられたみたいに、私の足に一段一段響いた。



「十のマネージャーしてる方ですよね。確か前に、電話でそう言ってたのを覚えてます」



言われる内容を予想してか、私は妙に警戒した態度を無意識にとった。

いい話をしに来たはずはない。



「マネージャーとは、どういう存在かわかりますか」



スーツ姿でも、夕日が似合ってしまうほど落ち着いてる。

でも、私も負けられない。

何を言われても、十のことは諦めないって決めたんだ。

十は私にとって、絶対必要な存在になってしまったんだから。




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