ファンレター



堤防は静かだった。

考えることを忘れて、ただ時間に身をまかせる。

川の音がサラサラ聞こえて、少しずつだけど、気持ちを落ち着かせてくれるようだった。



今、何時だろう。

そういえば、おじさんの所に寄る約束もしてたんだっけ。

もうお店は、閉めてしまったと思うけど。

雑誌は見つかったかな。



二十年前、布施原さんに何があったのか。

その答えが、私の道を教えてくれるような気がする。



冷たい風。

動きが鈍る身体とは正反対に、私の思いは少しずつ行くべき方向を導きはじめてた。



愛撫してくれるススキが多いせいか、この街の月は輝きに陰りがない。




お父さん、お母さん

ごめんなさい。



私、今日は帰りません。



小さな駅は、まだ稼働中だ。




< 157 / 218 >

この作品をシェア

pagetop