ファンレター
堤防は静かだった。
考えることを忘れて、ただ時間に身をまかせる。
川の音がサラサラ聞こえて、少しずつだけど、気持ちを落ち着かせてくれるようだった。
今、何時だろう。
そういえば、おじさんの所に寄る約束もしてたんだっけ。
もうお店は、閉めてしまったと思うけど。
雑誌は見つかったかな。
二十年前、布施原さんに何があったのか。
その答えが、私の道を教えてくれるような気がする。
冷たい風。
動きが鈍る身体とは正反対に、私の思いは少しずつ行くべき方向を導きはじめてた。
愛撫してくれるススキが多いせいか、この街の月は輝きに陰りがない。
お父さん、お母さん
ごめんなさい。
私、今日は帰りません。
小さな駅は、まだ稼働中だ。