ファンレター
時を超えて
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時を超えて
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大きな駅の光が、桜の木をぼんやり浮かび上がらせて。
こぼれたカケラは、根元のベンチを照らしてた。
銀の光が混ざった髪を月にさらしながら、弱り切った手のひらがページをめくる。
「秋の夜長には、読書と決まっていてね」
「でも外はもう寒いよ。それに、週刊誌を見ることはあんまり読書って言わないんじゃない?おじさん」
二十年以上前のその雑誌は、さぞ丁寧に保存されていたんだろうと想像させるくらい
折り目どころか、変色さえも感じさせなかった。
「東京に行くのかい」
「うん。でもそれでいいのかは、まだ分からない。ただ、このままじっとしてられないだけ」
「…いいんじゃないかな、それで。何もしないまま後悔を残すよりは、ずっといい」
雑誌をたたんで、おじさんは桜の木を仰いだ。