ファンレター
やがて由起子の評判を聞き付けたプロダクションが、芸能界へとスカウトにやって来る。
「NEOプロダクションの社長をしております、尾根と申します」
女優となった由起子には、固いガードがついてまわり、次第に手紙は男からの一方的なものとなった。
ただ返事を待つだけの日々が続く。
そして郵便受けの釘が錆で音を鳴らす度に、男は自信を失っていった。
『布施原由起子に恋の花』
仕事柄、嫌でも目にする多くの記事。
名のある俳優との噂が出るたびに、男は苦しんだ。
そしていつしか、男は手紙を書くことをやめた。
忙しい毎日の中の支えであった男からの手紙が途絶え、由起子はやがて笑顔を失っていく。
会いたくても自由に会うことができず、自分の気持ちを伝える手段さえ失っていた由起子は、ある生番組の最中に、男への想いを叫んだのだった。
世間に衝撃と偏見の目が広がる。
「下品な女優」
「二十も歳の離れた男との醜い恋」