ファンレター
運悪く今日は木曜日。
明日はまだ学校がある。
「まぁ、学校には自分達で連絡入れるしかないね。それより着替えたら?この先、制服はまずいでしょ」
多美は自分のバッグから、私に服を差し出した。
なんとも準備のいい多美には、毎回驚かされる。
でも、東京に着いたらどうしよう。
十の家も知らないし。
こんなことなら、携帯もらっておけばよかったかな。
ちょっぴり不安。
「それで?あの本屋のおじさんが、布施原由起子の恋人だっていうの?」
「はっきりそう聞いたわけじゃないけど…、多分」
「相手は一般人てことで、雑誌にも名前は出てないし…。確証はないんでしょ?おじさんの妄想とか」
「ううん、それは違うよ」
同じ立場だからわかる。
おじさんは、今でも布施原さんを待ってるんだ。
私が十を想うより、もっともっと長い間、布施原さんを想ってきた。
手の届かない人になっても、本当に大切だったから。